山田スタジオ
山田 慎一郎
つい最近まで珍しいと思っていたテレワーク、WEB会議も一般的になり、家にいる時間が相当長くなりました。そうすると住まいへの想いも次第に変化してきて、家の中でより快適に暮らそうと思ったり、もしくは何かの不具合に気づいてしまったりで、壁紙やカーテンを換えようとか家電やエアコンなどの設備を刷新しようと悩んだり。テレワーク用の書斎(コーナー)をリビングの隅っこにでも欲しいと思ったりしていませんか? 私は作りたいと思いました。
ところで先日、数ヶ月ぶりにホテル運営(全く売上は芳しくないそう)と住宅販売(主にマンション、ホテル計画から集合住宅にチェンジする案件増)を手掛けられている会社での打ち合わせの際、新しい生活様式での住み替え需要についての話になりました。都市部限定の話かもしれませんが、通勤を気にしなくなりと今より広い生活空間を確保しやすい郊外での暮らしを考える人が増えていると。しかもただ郊外というのではなく、環境の良いところ、例えば海が見えるとか仕事にプライベートに今までとは違う景色の中で生活したいと考えるそう。①テレワーク→②家にいる時間が増→③家の中が気になる→④設備などを直し尽くす→⑤なぜかしっくりこない→⑥そもそもこの場所に納得できなくなる→⑦今までと違う環境の中で暮らしたい→⑧いっそのこと引っ越すことを決断する、とはならないかもしれませんが、窓の外を見てください。これまでの単に駅近だから良いという考えに疑問を持ってしまうかも。
そんな中で思い出した拙宅選び。約10年前、環境の良い住まいを探していました。中古マンションをリフォームして住むつもりで選んだ不動産検索キーワードは「ルーフバルコニー」でした。横浜は丘も多く、斜面に沿った階段状のマンションが多くあります。それらはルーフバルコニーを持つことも多く、それこそ眺望、景観に配慮しているだろうと。その中でも森や公園に面しているものがあれば尚更よし。ありました、目の前が緑でカーテンをしめなくても暮らせる最上階メゾネット住居。
すぐに内見し、気に入って購入を決めました。
リフォーム後に販売されることの多い中古マンションですが、竣工当時のままお住まいで不要な修繕はお断りし、その分販売価格を下げてもらえたことは良かったこと。誰かのリフォーム後の購入で自分の好みでないとしても、新しくなった内装に手を入れるのは気が引けますし。
良いことばかりではなく、その環境を手に入れるため受け入れたのは最寄り駅から徒歩圏内とはいえ急坂を何度も上り下りしなければならないこと。建物にたどり着いても階段で最上階へ。そう、エレベーターはないのです。
北側に眺めの良いルーフバルコニー、南側は保存緑地の私的「好立地」の一室をリフォームして暮らしているわけですが、訪ねてくる友人は誰しも駅からのアップダウンにノックアウトされ、丘の上の最上階までの階段にギブアップ気味。友人の「眺めは良いよね」は褒め言葉として受け取っています。エレベーターがないことで購入を諦めた人も多いでしょうけれど、健康でさえいればクリアできる問題と思っています。
「どちらにお住まいですか?」と聞かれたら
「ちょっと坂が多かったりで大変ですけど良いところですよ」と応えます。
これから住まいを探す(検索する)キーワードに「不便な好立地」が加わるかもしれません。答えがひとつでないのが住まい選びですし、こういう時代だからこそ新しい価値観をもって住まいの場所選びをして下さい。ご自身ではわからないことも多いでしょうから建築家がお手伝い、そのような時は是非お声がけください。さて皆さんは「どちらにお住まいですか? 素敵な環境の中で暮らしませんか?」
さて過去3回寄稿した「街のはなし」。地下新駅の様子はわかりませんが、公共芸術施設を併設する高層マンションの建築計画のお知らせ看板も立ち、いよいよ旧駅東側の開発も目に見える形で進んでいきます。個人的にですが、綱島街道を跨いで地上旧駅と地下新駅を結ぶペデストリアンデッキができると面白いかなと妄想しています。とにかく街の記憶が損なわれないよう新しい歴史が積み重なりますように。
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