お引越し

ken-ken inc.,一級建築士設計事務所

代表取締役 河辺 近


国によって生活様式は違い、引越しの概念が変わる。ネパールの遊牧民族は家畜とともに、季節によって住まう場所を変えていく。建物は無く、移動テント(パオ、ゲル)の中で暮らしている。一方、ヨーロッパでは新しい建物を創ることは少なく、家具の揃った中古の住宅の内装をリフォームして使うことが多い。アメリカなどでは新築の住宅を建て、アパートメントから移り住むことも少なくない。暮らし方や生活スタイルは個々様々である。

各国の住宅内にある家財の全てを家の前に並べ、そこに住む家族と共に写真を撮った写真集がある。『家族全員と所有物一式を自宅の前に集めた世界中の写真』である。ヨーロッパでは古いものを大切に使い、必要な物しか置かれていない。ロシアでは赤い色の家財道具が多い。船の上で生活している家族には意外と家電製品が多いことに驚く。世界の国の中で、日本は家の中に家財がとてつもなく溢れていた。この家の中に本当に入っていたのかと疑う位の家財がたくさん並べられている。日本人はこれらを引越しによって運ぶのである。よって、人の手を借りなければ引越しが出来ない。引越しのTVCMが多いのは、それだけニーズがあるということだろう。

住まいを新しくする時、建て替えの場合は2回の引越し、新しい土地に建てる場合は少なくとも1回は引越しを行わなければならない。

その時がチャンス、断捨離するとてもいい機会である。減らしましょう。「いつか必要になる」いつかは来ません。今まで着なかった衣類、「痩せたら着られる」その日はいつ来るのか。記念に貰ったもの、結婚式の引き出物、台所の吊り戸棚に入っていたものなど、今まで使わずに置いたものが今後使うことがあるのでしょうか? 整理しましょう。

新しい家の計画の際、見せる家具、使う家具、収納のみ整理する家具などの収める場所をキチンと計画しておきましょう。空間には高さがあります。平面図(縮尺1/50以上)と展開図(縮尺1/50以上)を駆使して、収まる使いやすい場所を検討しておきましょう。収まる先が決まっていれば、引越しはとてもスムーズに終わるはずです。

私事であるが、今年10年ぶりに事務所の引越しをすることになった。現在の事務所は昔の運河沿いの倉庫を改修した建物で、床、壁、天井はコンクリート打ち放し、いやコンクリートやりっぱなしと言った方が当てはまる仕上げ。断熱材は無く、天井の高さが6mあり、室内の1/3を2階建てに改造して使っていた。以前の事務所に比べ面積が広くなった分、会社を立ち上げてからの20年分の書類、資料、本などをすべて整理せずに持ち込んだ。スペースには余裕があったからである。しかし、その後10年も経つと、模型やサンプル、図面、資料で溢れ始めていた。今回、移転先の新事務所を探し始め、同じ様なスペースの事務所が無いことに改めて気付かされる。そして行き着いたのは、旧横浜市役所と横浜スタジアム前の事務所ビル。今の持ち物を半分に断捨離しなければ、全く収まりそうに無い。

引越しは大変だ!

横浜・神奈川|暮らしをデザインする建築家|AA STUDIO

神奈川県、横浜市の建築家を中心とした建築家グループ。住宅や各種施設設計の経験豊かな建築家メンバー自らで運営し建築家の紹介、建築家コンペのコーディネートなどの各種サービスを行っています。

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