佐賀高橋設計室
高橋正彦
会社組織ではないアトリエ系の設計事務所。いろいろな理由で事務所が閉じられた場合そのあとのメンテナンスやリフォームなどの相談は誰にしたらいいのだろう?個人事務所に設計を依頼した場合その点が心配だという話をたまに聞きます。
今回は建築家が設計した住宅を引き継いでリフォームし、壊すことなく大切に住み継いだ事例をご紹介します。
この建物は今から20年以上前に設計されたものでした。最初の建主さんはご家庭の事情で手放すことになりその建物を別の方が新たにご購入されたようです。
新しく住まわれる方は自分たちの暮らしに合うように一部リノベーションをしたいと思っていて、本来ですと元の設計者に相談するのがいいのですが、すでにその建築家は他界。そこでリフォーム専門の施工店に相談をして進めていましたが、やはりデザイン的に納得するような提案が得られないということで僕のところへ相談にいらっしゃいました。
建築家が住宅を設計する時は、そこに住む家族や周りの環境に対して一番理想的な建物はどんなものかということを考えます。そのようにして考えられた建物に別の建築家が手を加える場合、最初の設計時に思い描かれたデザインやコンセプトをきちんと読み解くことが大切だと思います。
その行為は日頃建築家が住宅を設計する時に行っている行為とそう遠くはありません。以前自分が設計した建物に手を加える時でさえ、最初の設計時に自分が何を考えていたかを思い出そうとするくらいですから。
ある建築家によりしっかりと考えられた建物に別の建築家が手を加える。これは、元々のコンセプトをきちんと読み込み、そこに新たな物語を加え、建物をいい形で持続し使い続けるということにつながるとても素晴らしいことだと思います。当然時間も経過していますので、大掛かりなメンテナンスを施すという点も忘れてはいけません。
今回はデザインをできるだけ崩さず、不具合なども出来るだけ直して、このあとも長く住むことができるようにリフォームの設計し監理をおこないました。
住宅の場合、20年以上経過して持ち主が変わった時、まだ使えるにもかかわらず解体される事例も多くあります。しかし建築家によりきちんと考えられた住宅は時代や住み手が変わっても手を加えることにより快適な住宅に生まれ変わる可能性があります。
建築家の仕事は新築の設計だけではなく、元あったものの良いところを生かし、新たな命を吹き込むことも出来るのだということをもう少し知っていただければと思います。
外部は全て塗装を塗り直し、雨樋などもつくりなおしました
内部塗装やクロスも張り替え、設備機器も一部取り替えました
新たな造作家具や間取りにも手を加えてあります
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