山田スタジオ一級建築士事務所
山田 慎一郎
横濱元町AAStudioでは週3回の建築リフォーム相談会を元町のギャラリースタジオでおこなっています。また街に出て年間数回、建築模型パネル紹介、家づくり相談会を開催しています。通常は設計の相談、土地探しやリフォーム相談といった実務の話が多いのですが、江ノ島駅近くのギャラリーで待機中のある日、小さな相談がありました。私から声をかけると、
「あの、少し相談しても良いですか?」制服を着た少年K君。
「(何の相談?と思いながらも)もちろん良いですよ」と私。
相談内容は高校の課題。卒業ためには必ず取得しなければならない単位で、なんと300人ほどいる同級生全員が様々なテーマを自ら考え、レポートするというもの。K君は将来の希望進路=建築設計!に即した課題がよいと思ったそうで、友人30人に「どんな家に住みたいか」のアンケートをとり、その中から一件、間取り作成、模型をつくりたいと。建築設計体験版??? このような課題設定は珍しいと思いますが、建築模型展&相談会がたまたま近所でこれ幸いといったところでしょうか。
折角なので実際の設計についての解説や授業課題としてどうレポート提出するかなど色々相談にのりました。K君は翌日も相談会に参加し、アンケート内容や自身のレイアウト案も見せてくれました。案そのものはコメントできるレベルのものではなかったのですが、質問すると一応レイアウトには理由があり、目指す未来にむけての助走としては良かったなと思っています。
一方彼と話をして気になったことがあります。アンケートの内容が「暮らし」についてではなく殆んど「間取り」についての言及だったことです。アンケートを取る側も回答する側も「どのように」暮らしたいかというイメージが殆んど無く、部屋の数と大きさのみがクローズアップされていました。建築を単なる箱(モノ)として扱っていたのは残念ですし、なかでも住宅は、クライアントのライフスタイルそのものがカタチとなるべきだと思うので尚更です。家を建てよう、買おう、借りようとする際、「どのように暮らしたいのか」を少しでも考えるとその後の生活(コト)が随分豊かになる筈です。(と信じています)
やはりあらためて考えさせられるのは教育の重要性。小学校や中学校で住まいや暮らしに関する授業があれば将来の設計者はもちろんクライアントの意識もかわるでしょうし、数十年後には街並みも世界に誇れる未来が待っているのではないかと思っています。
2年まえの寄稿(第33回 街の記憶とノスタルジーと)で私の住む街についてお話ししました。新駅地下工事は進み、かろうじて建物は残っていた温泉施設もいつの間にか工事車両が出入りする現場になり、どうやら新駅周辺には高層ビル(公共施設+共同住宅)も計画されているようです。徒歩圏内の米国A社施設も稼働し、スマートタウンも工事が進んでいます。かつての温泉街中心施設である旅館や料亭は次々マンションへとかわりましたが、気にしてみると当時の名を冠している建物が数件見つかります。名前だけでなく新しい建築が古い街並みの記憶を継承する工夫があることを願っています。
さてK君の模型やレポート、どこかでみせてくれる機会があればと良いなと。なんでも住まいづくりに興味を持ったのは趣味の海外ホームドラマ鑑賞がきっかけで、出窓スペースでおこなわれる家族会議の様子(暮らし)がとても印象的だったからだそう。近い将来、その「暮らし」を大切にする建築設計者同志として再会できたらドラマティック!
サテライト展示会/様々な人との出会い
地下駅工事/2年前にあったマンションも壊され
0コメント