5′st 一級建築士事務所(ゴダッシュエスティ)
久保田恵子
埼玉県宮代町で、関わってきた『竹のアート』が23年目を迎えました。
竹林を整備しながら、切り出した竹で田んぼにアート作品をつくり、町のみんなに見て楽しんでもらおう、という活動です。毎回15~20団体が参加しますが、私は友人たちと『参番穂(さんばんほ)』というチームを組んで、1年目より、ものづくり・場づくりをテーマに作品をつくっています。
そもそも、なぜそんなに多くの竹林があるのかというと、
関東平野の冬は北風が厳しく、からっ風から家を守っているのです。それらは、樫やクヌギなどとともに屋敷林・防風林と呼ばれ、田園に点在する、こんもりした林は、その地域らしい風景をつくりだしています。夏場は日陰をつくり、涼しい風を運んでくれたり、暮らしの道具や、炭、仮設物にも使われるなど、生活に密着していました。
しかし竹は毎年にょきにょきと生え成長していくものですから、人の手が入らないと荒地となってしまうこともあります。それをみんなで切らせてもらい、お礼にお茶とお菓子をごちそうになり、作品づくりに使わせてもらっています。
さて、その作品ですが、場づくり、というのは、単体のみでは考えられません。どの場所に建てるか?がとても大切な要素です。池のほとりにたたずむものか、人が通り抜ける場所なのか、樹木にそっと寄り添うものか。竹でつくるアートですが、通常設計をおこなっている建築における場との関係性となんら変わりはありません。
アート単体のデザインは、竹の太さ、割り、しなりと素材の特性を生かしながら、場としてふさわしい全体のフォルムを考えています。長く続けていると、アイデアが絞り出せない年もあったりしますが。楽しい時間です。
夜はろうそくの光で呑んで語る1年に1夜だけの『ほ・ほ・ほのBar』をOPENします。
普段なにもない場が、コトを起こすことで、まったく違うエネルギーをつくりだし、モノを中心に、様々な登場人物が現れ、動き続けてゆきます。
竹のアートで、手を動かし身体で感じるものは、ものづくりをする施工者とデザインをする設計者との距離を近づけてくれます。実際仕事の現場で、職人さんとのコミュニケーションにも役にたっています。
竹林の荒れを防ぐ伐採、それを使用してのアート制作、使用後の竹素材の処分、この循環を成立させることは、まだ道半ばです。ボランティアとビジネスのジレンマが横たわりもしますが、竹は、建築・土木・道具・インテリアへの活用など、可能性は無限大です。
このように、竹アートというイベントの中には、様々な要素が絡み合います。一見、単なるオブジェの展示に見えるかもしれませんが、これはひとつの場、コミュニティ作り、さらに言えば、ある一体のまち、むらづくりの疑似体験とも言えます。仮設であること、一過性のイベントであることを強みに、23回もの試行錯誤、実験、体験をすることができました。
しかし、これだけ竹のアートイベントを続けることができたのは、事務局リーダーを務めてくださった地元の建築愛に溢れた建築家の方々、ほほほのBarでの豚汁をはじめ美味しい食事を作ってくださる地元のお姉さま、豚汁の材料にと育てている野菜をもってきてくださる方、そして、ともに作り上げる仲間がいたからです。心より感謝申し上げます。
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