(株)GEN INOUE
井上 玄
今でも軽井沢や熱海などの避暑地やリゾート地に個人で別荘を持ちたいと思いますか?
既に所有している人も、一年に数回しか利用せず行っても掃除ばかりで建物のメンテナンス費用も嵩むなど、デメリットを感じることが多いようです。そんな中、使わない時は収益を生む別荘を建てる人が増えています。
ここ数年、私の設計事務所でもこのような仕事が増えてきました。昨年の夏にオープンした千葉県富津市の一棟貸しのコンドミニアム「Asile」(https://www.ikyu.com/vacation/00051536/)もその一つです。この建主はコロナ禍でも安心して旅行を楽しめる施設として利用した一棟貸しコンドミニアムの安全性やプライベート感に魅了され、その需要を感じ一棟貸しのコンドミニアム(コンドミニアムは基本、自炊です)を建てようと決意したようです。都内から60分程度でアクセスできる範囲で、他にはないアクティビティを行うことのできる施設を目指し、プールやサウナがある一棟貸しのコンドミニアムを富津の海が見える場所に建てました。この施設は「一休」などで予約することができる不特定多数をターゲットにしたコンドミニアムです。
今、設計中のプロジェクトにも同じようなコンドミニアムがいくつかあります。波が良いサーフポイントの海近のコンドミニアムや周囲に軽食や宿泊施設がない場所での自宅+カフェ+民泊の機能を持つもの。いずれもその場所の良さを最大限生かし、その地域に新しい価値を付加しおうと計画しています。この二つに共通することは、建主自身がこの場所の魅力にとりつかれていること、その魅力を共感してくれる人がいると信じていることです。同時に、不特定多数の需要を狙うより、自分の趣味や考え方に共感してくれるニッチな需要を求めていることも特徴です。
一方、別荘のサブスクや数人で一つの別荘を所有するサービスが増えてきました。その代表的な一つが「NOT A HOTEL」です。(https://notahotel.com)これは一棟購入やシェア購入という形で施設のオーナーとなり、その出資金額によって使える日数が決まっています。自分の持っている日数の中で使わない時は貸して収益を得ることができます。また購入した施設以外も相互利用できる仕組みなので使う人や季節によって好きな場所の施設を選ぶことができます。これは個人で別荘を所有するデメリットを解決することが目的ではなく、多くの人が訪れる場所も固定されることなく、別荘のようなプライベートが守られ非日常を感じられる時間と体験を手に入れることをコンセプトとしています。
このように収益を生む別荘や別荘をシェアするなどの変化が起こっています。この変化は別荘の在り方や使い方を超えて、私たちの日常生活・暮らしにも影響するのではないでしょか?私たちの暮らす場所は誰が決めたのでしょうか?私の暮らしも子供の成長とともに大きく変化しています。駅から遠くても自然豊かな環境を優先させる時期、逆に利便性を優先する時期もあるでしょう。住まいの在り方も、庭のある大きな家に住むことが楽しい時期もあり、マンションのようにコンパクトに暮らす時期もあると思います。これからの暮らしは一つの敷地や住まいに拘束されることなく、遊牧的に旅をするように暮らしてみるのも楽しいかもしれませんね。
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