株式会社 GEN INOUE
代表取締役 井上 玄
横浜市内の65%以上が平坦ではない地形と言われている。この地形的な特徴から、雛壇状の造成地が多く、そのシンボルとも言えるコンクリート擁壁が街並みを形成していると言っても過言ではない。
写真の「雛壇のある家」も、雛壇造成地の最下段に位置し、敷地と道路に高さ約1.6mの古い擁壁があった。前面道路にセットバックが必要だったため、古い擁壁を解体し新しくコンクリートの擁壁を作る必要のある設計条件であった。
そもそも、擁壁とは土が崩れてこないために必要な土留の壁のことであり、現在では、ほとんどが鉄筋コンクリート造となっている。私の設計した「雛壇のある家」では、土が崩れない角度を検討し、約35°の傾斜をつけた。更に、ワイヤープランツなどの根を張る植栽でカバーすることで、崩れにくく水はけの良い法面とし、擁壁を設けることなくこの問題を解決した。これは、擁壁の工事費用を抑えるだけでなく、無機質で閉鎖的な印象のコンクリート擁壁のかわりに、緑豊かな庭を街に開放できたとも言える。この擁壁にかわる考え方が街に普及すれば、緑が増えるという視覚的な効果だけでなく、街(公)と敷地(私)の境界の在り方に変化が生まれ、昔の下町に見られたような、子どもたちが遊び、活気を取り戻した風景を現代の街が取り戻せるのではないかと期待し、一つの住宅を設計した。 また、まず造成を整え、その上にウワモノとして建築・住宅を載せる方法ではなく、建築と造成を等価に考え、同時に提案できる建築家との家づくりの特徴とも言える。
雛壇の家
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