建築+アートの提案

マツイリミコ建築設計事務所 一級建築士事務所

マツイアートマネジメントオフィス

松井 理美子


 ひとことに [建築] といっても、幅広くなってきています。ファニチャ類はもちろんのこと、照明器具やカトラリー、アクセサリーまでデザインする建築家もいます。そういった暮らしを彩るもののひとつに、アートがあります。 [建築にアートを取り入れる] というと敷居が高く思われがちですが、もっと身近に自然なカタチでアートを楽しめる [新しい建築とのかかわり方] とは何でしょう?

 数年前にオープンしたショップ壁面にアートペイントを施したことがあります。犬のグッズを販売するお店だったので、素直に犬を主人公としました。描かれた主人公がショップのメインキャラクターに起用されたことで、犬の絵をただ描くだけではなく、ショップのイメージづくりにも深く関わることができました。

 また犬の主人公とともに [犬の十戒] をフランス語で描き、ペットへの大切な思いを表現しました。 [犬の十戒] とは、飼い犬が飼い主にお願いしたい10箇条を綴った英文の詩です。その最終節は以下の通りです。


私に何が起きてもいつまでもわたしのそばにいてください。
「君のそばにいてあげる事は出来ない」「私のいない所でどうにかなればいい」なんて決して言わないで欲しいのです。
あなたがそばにいるだけで、どんな事でも私は乗り越えれる気がするからです。
だから忘れないで・・・私はいつもあなた愛しているという事を。
そして忘れません。あなたが愛してくれたことを・・・

(「犬の十戒」yoshi e bookland より)


 ペットを飼った経験のある方には、たまらない内容です。その十戒をベースにしたWEB絵本(現在電子ブックとして購読できます)をショップのホームページ上に展開し、さらにショップカードやウィンドウディスプレイのデザインへとつなげました。もちろん壁面にぺイントしたのは私ではなく、絵本作家である池谷剛一というアーティストです。

 わたしの役割は、建築空間とアートを繋げることです。具体的には、コンセプトの提案、アーティストの選定、ペイント箇所や行程の調整といったところです。お施主さんの思いや希望をくみ取り、どういうカタチ、手法でつくっていくかを提案し、アーティストも交えて話し合って決めます。建物をつくるとき仕上げ材として壁紙や塗装を選ぶように、アートペイントも選択肢に加えることで暮らしはもっと多彩になるでしょう。例えば住宅の場合でしたら、家族の歴史やポートレイト、お家を新築した記念をモチーフとしたペイントを施すのもおもしろいと思います。

 かつてはどの住宅にも床の間があり、生活とアートを繋げる役割を果たしていました。生活形態の変化や住宅の狭小化により、都市部では和室が減ると同時に床の間も少なくなってきました。無駄なスペースはつくらず、収納を少しでも増やしてほしい!といった要望をよく聞きます。そのため空間の隙間は収納で埋められ、テトリスのようなプランになりがちです。

 合理的に無駄ない空間をつくることも大切ですが、 [遊び・無駄?=ゆとり] を提案することも建築設計に必要な要素だと考えます。床の間に代わる空間をつくるということではなく、生活のなかにちょっとした寄り道的要素を盛り込むということです。フッと下らないことを考えてしまうことで気持ちがリセットできるような、忙しい生活のなかで忘れていたことを思い出させるような・・。

 かなりハードルの高いことを書いてしまいましたが、そういったことを心にとめて仕事をしています。暮らしを活性化させる触媒としてのアートを[建築+アート]というカタチにして、これからも提案していきたいと思っています。



ペイント風景

ペイント風景

完成壁面

WEB絵本

ショップカード

クリスマスディスプレイ

横浜・神奈川|暮らしをデザインする建築家|AA STUDIO

神奈川県、横浜市の建築家を中心とした建築家グループ。住宅や各種施設設計の経験豊かな建築家メンバー自らで運営し建築家の紹介、建築家コンペのコーディネートなどの各種サービスを行っています。

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