横浜で使える「高気密・高断熱の木製サッシュ」の開発をしてます

鈴木アトリエ

鈴木 信弘


住まいの外観を印象づける要素として窓の意匠はとても大切だと思うのです。だから私の設計する住宅は窓を木製にすることがとても多いのですが、「木製の建具なんて耐久性もなくて、メンテナンスも大変じゃないか? しかも省エネ時代に隙間風の入る木製建具はどうなのよ!」とよく言われるのですが、それは大きな誤解なのです。 

私が使っている木製窓は厳寒地でも楽々の高性能な断熱・気密を有している国産の木製のサッシュ。このサッシュをさらに進化させて横浜などの都市部、特に準防火地域で使えるサッシュを作ろうと画策しております。ようやくフルラインナップの目処が立ったので、試験場の様子をちょっと紹介しようと思います。

防火の基準をクリアしてお墨付きをもらうためには、木材試験センターで延焼検査を受けます。都市部で使える窓にするためには、800℃の火災放射に晒して20分間、室内に火災が入らないことが条件なのです。これは火災にあった時に、消防車が到着するまでの時間を耐火で確保するというのが目的。鉄製ならともかく、木製しかも杉材でそれをクリアするなんて考えただけでも大変そうですよね? また網入りガラスは美観的に嫌だったので、透明なガラスにしたかった。そんなわがままな想いを詰め込んで製作した木製サッシュ。

いざ!延焼試験をします。

着火して火が安定すると試験場はものすごく暑くなります。火災のすごい熱輻射を感じながら、真っ赤に燃える木製サッシュを見続けます。Low-eガラスが先に熱割れを起こして落ち、熱膨張スペーサーが膨らんで火の回り込みを止めつつ、木材が1分に0.5mmづつ燃えながら炭化して耐えるのです。 17分くらいになると煙もちょろチョロと出てきて、かなり心配になります。

なんとか20分をクリアしました。がその10秒後には完全に燃え抜けてしまいます。そのくらいギリギリの寸法で設計しています。

消化後はどこが弱点だったのか、熱の回り方や燃え方を記録して、今後の資料とします。この繰り返しで様々な窓タイプを1対づつ試験を受けないといけないのですから大変です。しかも裏表両面でこの試験を繰り返します。

ちなみに、玄関ドアとFIXガラスの組み合わせの方は、早くも10分で室内に火が回ってしまい不合格。ちょっとしたミスが原因でした。

小説「下町ロケット」で打ち上げに失敗した時と同じ気分です(泣)。また次回にこの窓は再チャレンジします。

どうですか?

木製だからといって弱いわけではないのです。

少しでも木製窓に関するイメージ変わったら幸いです。

自分の使いたい木製窓を探していたら、いつの間にかこんなことまで手掛けることになったというのが正直なところですが、新しい建築との関わり方の一つです。このノリで「横浜の街に木製窓を普及させる会」を本気で作ろうかと。思っているこの頃です(笑)。

横浜・神奈川|暮らしをデザインする建築家|AA STUDIO

神奈川県、横浜市の建築家を中心とした建築家グループ。住宅や各種施設設計の経験豊かな建築家メンバー自らで運営し建築家の紹介、建築家コンペのコーディネートなどの各種サービスを行っています。

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