株式会社 GEN INOUE
井上 玄
「暮らし」をデザインする建築家
「住まい」 の設計を行う中で様々な価値観や「暮らし」に出会いました。お隣さんとの共有空間をもつ戸建て住宅、仕事場と居住空間の間に緩衝空間を挟んだSOHO、「隣居」的な距離感の二世帯住宅、フレキシブルに増減築が可能なシェアハウスなど、いずれも今までの常識や形式では窮屈でした。この特徴を最大限にいかした建築的な提案を通して「住まい」だけでなく「暮らし」をデザインすることを目指し設計活動を続けています。
自宅を「海近」の逗子へ
私は横浜で設計事務所を主宰すると同時に二児の父親です。私が子どもの頃、海での磯遊びや山の散歩は休日のイベント、つまり非日常的なものでした。自分の子どもたちには日常的に自然に触れて欲しいという気持ちが引越しの原動力となり、子どもの小学校入学を機に自分の育った横浜を離れ、逗子の「海近」の場所に引越すことを決意しました。一方、「海近」ではありますが「駅近」ではなく不便です。この不便を自分の働き方を変え肯定的に捉え、自分の描く「暮らし」を実践する勇気を持てば、豊かな「暮らし」を手に入れられることに気づきました。
設計事務所の働き方改革
この引越しを機に、自分の主宰する横浜の設計事務所の働き方を変えました。自分だけではなくスタッフ(社員)の働き方も、そのライフステージにあった働き方、それぞれの暮らし方にあった働き方を享受していこうと。今では在宅勤務的な働き方なども実践され、質を保ちながら効率的に仕事を進めています。設計事務所の場所は「駅近」で便利を優先した結果、大きさは小さくなりましたが、ワンフロアーを3社の設計事務所がシェアする楽しい仕事場です。
多拠点居住の実践と自分らしい「暮らし方」のデザイン
引越しと同じ頃、丹沢湖の上流で「山近」の周辺環境を内部空間に取り込んだ「山のセカンドハウス」の設計が進んでいました。プロポーションや素材の異なる7つの縦長の内部空間には、ベッドやソファなどの固定的な家具は置かずフレキシブルな使い方ができる計画としています。時間の流れで変化する光や季節の移り変わりで変容する外部環境を内部に取り込み、使う人のアクティビティや気分によって好きな居場所をさがし移動するセカンドハウスとしました。家族だけでなく事務所のスタッフが使い、地域の人との交流の場となるような開かれた場所となるように様々な可能性を探っています。
このようにどこに住み、どう働くのか?ONとOFFを切り替えるためにどこで休暇を過ごすのか。場所は便利でなくても、有名な別荘地でなくても、魅力的な環境がありそのメリットを最大限にいかしたお気に入りの空間があれば良いのではないか?その魅力をフットワーク軽く遊牧民のようなに楽しむ「暮らし方」。今後も建築家として「多拠点居住」を実践し、その魅力を発信していきたいと思っている。
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