階段と空調

北川裕記建築設計 一級建築士事務所

代表 北川裕記


例外もない訳ではありませんが、これまで設計した住宅では上下階それぞれに廊下があり、それを階段で繋ぐという構成の家はほとんどありませんでした。どちらかの階には廊下があっても、階段を上ったら(あるいは降りたら)一室空間のLDKという構成が多いです。

他にもそうする理由はあるのですが、多くの場合、廊下をそんなにとるほど建てられる面積に余裕がないことが最も大きな動機になっています。

また逆に廊下を設けないことで、家族が個室に行くまでに必ずLDKを通る、階段を上がるといきなり窓の外に緑あふれる景色が広がる、等といった効果を生み出すことも可能になります。さらに吹抜けを階段と組み合わせることで、上下階を緩やかに繋ぎ、家族の個室とLDKの間でお互いの様子を感じられるような関係を作り出すことも可能です。

一方でこうした構成には解決するべき問題もあります。それはLDKの空調効率です。LDKが下階にある場合には暖房時の暖気が、上階にある場合には冷房時の冷気が、どんどん流れていってしまい、空調の効きが悪くなります。そこでなんらかの「フタ」をすることになります。

1階にLDKがあり、階段を上った2階には個室がある場合

階段を上った2階廊下との間にガラス引戸を設置しています。右側は1階の廊下とLDKを仕切る木製引戸。階段と廊下の間は落下防止を兼ねて強化ガラスを入れてあります。階段上の天井には暖気を送り返すファンを設置します。

2階にLDKがあり、階段と吹抜けの廻りに1階の個室を配置した家。

左が仕切りを開けた状態、右が閉じた状態です。

半透明の間仕切り戸は開けた状態では階段上で壁状に収納されます。

ただ、こんな例外もあります。

柱の間に厚さ3cmの杉の無垢板を嵌め込んで造る「板倉工法」の家。

高断熱なので、階段や2階の床のスリットを利用して、1階に置いた蓄熱式暖房機で家全体を暖めます。

冷房はありません。

(写真:平井広行 *を除く)

横浜・神奈川|暮らしをデザインする建築家|AA STUDIO

神奈川県、横浜市の建築家を中心とした建築家グループ。住宅や各種施設設計の経験豊かな建築家メンバー自らで運営し建築家の紹介、建築家コンペのコーディネートなどの各種サービスを行っています。

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