一級建築士事務所 水口建築デザイン室
水口 裕之
住宅を主に設計していますが、施主が自ら建物の工程の一部に参加することを割とオススメしています。土地を買って、そこに目一杯の大きさの家を建ててとなるとほとんどの場合で予算が相当厳しくなってくるのですが、少しでも減額するために例えば壁に珪藻土を塗ったり、床にワックスを塗ったりするのは素人でも何とかできるのでやってもらうことがよくあります。
減額の効果そのものは、壁にビニールクロスを職人さんに貼ってもらう予算と同程度で珪藻土の材料費が賄える程度で(人件費はタダで)実はそれほど大きくなくて、建て主さんの自分の専門の仕事でどんどん稼いで頂いてそのお金でプロの職人にやってもらった方が時間もかからないし仕上がりも圧倒的にきれいなんですが、それだけではない建て主さんにとっていろんな意味での効果が大きいように思います。
ほんの少しでも自分の家を自分で仕上げたという実感(自己満足)や自分の家族や友人へのちょっとした自慢、作業して頂いた職人さん達への尊敬や感謝の念、これから長く住み続ける家に残す思い出、、、それらの思いに加え、その後長く続く家のメンテナンスについても簡単なものなら自分でやってみようという気構えも持ち易くなると思います。
大体の場合において設計者の私達や、現場監督も休日にその施主施工のお手伝いに駆り出されることとがあって、私も漆喰塗や珪藻土塗にペンキにワックス、壁和紙張りとそのおかげもあって色々と経験してきました。左官のコテ使いには結構はまってしまって、たまに無性にやりたくなってしまうほど。腕に覚えがあり、あまりにも広すぎる面積の左官を自分でやろうとして仕事に支障をきたしてしまいそうになる施主さんもいますが、現場監督の工程の管理も大変なのでそこそこの面積にしておいた方が良いようですが。。
仕上がりについては例えば珪藻土などの左官については、素人が塗った方が味わい深いというようなこともあります。プロの左官屋さんにラフに塗ってくれと言っても意外と難しいようで、材料を無駄にせず均一に塗ることを体に叩き込まれているせいなのか仕上がってみるときれい過ぎるということが多いです。素人が材料の無駄使いや、コテの向きや塗り厚さとか全く気にせずに塗った壁は塗った人の個性に溢れていてとても迫力があったりして、それは逆にプロには出せない味となります。
設計者や現場監督にとってはあまりにしょっちゅうだと慣れない肉体労働がきつかったりしますが、少し職人の世界に近づけたり、施主さんも苦労しつつ最後は喜んでいるようだし、どんなに仕上がりがひどくてもそれがクレームとなることもないので(施主自ら施工したので当然)、結構良いことだらけなのです。
最近は建材メーカーなども施主施工のサポートに手厚いところもあるので、これから家を建てる方は少し自分でもやってみようという気になってみても平気ですよ。オススメします。
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